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【中医学ノート vol.4】あなたの「今」を丁寧に見るー弁証論治(べんしょうろんち)という考え方






 vol.3では、中医学の「整体観念」について、自然・身体・社会という3つのつながりの視点でお伝えしました。


今回は、vol.2でも少し触れた「弁証論治(べんしょうろんち)」について、もう少し丁寧にお話しします。これを知ると、「同じ不調でも、人によって整え方が違う理由」がわかるようになります。







1.同じ「疲れた」でも、中身は全然違う


 少し想像してみてください。

Aさんは、顔色が青白く、声が小さく、食欲もない。少し動いただけでぐったりしてしまいます。 Bさんは、顔が赤く、なんだかイライラしていて、頭がガンガンする。でも食欲はある。


どちらも「疲れた」と言っているけれど、身体の中で起きていることは、全く違います。


西洋医学では「疲労」と一言で分類されるかもしれません。でも中医学は問います。

「あなたの疲れは、どんな種類の疲れですか?」と。


Aさんは気(き)が足りていないのかもしれない。Bさんは気の流れが詰まって、熱が上に上がっているのかもしれない。同じ言葉でも、状態は真逆です。だから、整え方も当然、変わります。

これが弁証論治の根本にある考え方です。







2.「証(しょう)」とは、今のあなたの状態のこと


 弁証論治の「弁証」は、「証を弁(わきま)える」、つまり「今この人の身体はどんな状態にあるのか」を読み解くことです。


この「証(しょう)」という言葉、少し難しそうに見えますが、意味はシンプルです。今のあなたの、心と身体と環境を合わせた「全体の状態」のことです。


証を読むために、中医学では次のようなことをじっくり観察します。


 ・顔の色・肌の艶・目の輝き

 ・声の大きさ・呼吸の深さ

 ・食欲・睡眠・汗・冷えやほてり

 ・感情の状態・最近の生活の変化

 ・今の季節や、住んでいる環境


こうした情報を全部集めて、「今この方はどんな状態にあるのか」を読み解いていく。それが弁証です。


施術でお客様に触れるとき、私も自然と同じことをしています。肌の温度、筋肉の硬さや冷たさ、呼吸の浅さ、顔色。言葉にならない「今日の状態」が、身体にはきちんと刻まれています。







3.「論治」は、あなただけの整え方を選ぶこと


 証が読めたら、次は「論治(ろんち)」― その状態に合った整え方を選ぶことです。


たとえば「眠れない」という悩みひとつ取っても、中医学では原因をひとつに決めません。


 ・心(しん)の血が足りなくて、心が落ち着かないのかもしれない

 ・腎(じん)の力が落ちて、身体が静まらないのかもしれない

 ・肝(かん)に熱がこもって、頭が静かにならないのかもしれない


それぞれ「証」が違うから、整え方も違う。同じ「眠れない」でも、その人の今の状態を見て、ぴったりの方法を選ぶ。これが「オーダーメイド」と表現される所以です。






4.聖庵の施術も、じつはこれと同じ精神で


 聖庵のオイルは、季節ごとに植物を変えています。でもそれだけではなく、その日いらっしゃった方の状態を見ながら、触れ方やケアする部位も少しずつ変えています。


「今日はこの方には、温める植物のオイルが合いそう」

「今日は胸の周りをゆっくりほぐす時間を長めに取ろう」


こうした判断は、今までの施術経験から来ているものでしたが、中医学の弁証論治を学ぶことで、その「なぜ」が言葉になってきた気がしています。


整体観念(全体を見る視点)+ 弁証論治(今のあなたを読む視点)

この2つが合わさって、初めて「その人らしい整え方」が生まれる。聖庵が大切にしたいことと、深いところで重なっています。








おわりに:「みんな同じ」ではなく「あなたに合った」整え方を


 弁証論治を知ると、「みんなに効く万能な方法」を探すより、「今の自分に合った方法」を選ぶことの大切さが見えてきます。


流行っているから。雑誌に書いてあったから。ではなく、「今の自分の状態はどうだろう?」と身体に問いかけてみること。


その小さな習慣が、聖(ひじり)なる自分への、静かな一歩になるのだと感じています。


(vol.5に続く)




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Owner Therapist 田所 聖妙(ayumi)


僧侶としての修行を経てセラピストへ転身。

和草オイルによる自然療法と、

季節のゆらぎを整えるワークショップを通じて、

身体から心へ働きかける日本の植物療法を探求しています。

緑育植物療法士®︎


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